不肖ワタクシの愛車です。フレームは97年型SCHWINN Homegrown Factory。20年前のフレームです。90年代半ば〜後半のアメリカンMTBメーカーが最も活気と野心があった頃のフレーム&フォークです。世界中のMTBメーカーが試行錯誤していた頃とも言えますね、各社、独創的なフレームやフォークが出てて楽しい時代でした。
メインコンポは9速のSRAM X0とシマノXTの混在、フロントフォークはAMP Researh F4 BLT、ブレーキはHOPE、ホイールはクランクブラザースの完組品や行きつけのショップ組み品を使ってます。フレームとフォーク以外は割と新しめの部品です(といっても5年以上は前のものですが)。ワタクシのお友達の乗るロードなんか較べると掛かってる費用は半分くらいです、MTBは不人気なので部品とか安いので😓
今はSCHWINN(シュインまたはシュウインと読みます)もAMP Researh(アンプリサーチと読みます)も倒産や買収やブランド売却などを経て見る影もありませんが、90年代当時、SCHWINNは歴史と伝統を備えた最も元気な米のメーカーで、XCファクトリーチームはトヨタのスポンサードがつき、中小のフレーム工房を買収しまくってた頃です。Homegrownシリーズは当時傘下に収めたYETIと共同でコロラド工房で製造されたシリーズです(当方のHomegrown FactoryはMade in USAですが、not YETIメイドです)。当時のSCHIWNNとYETIのDH-8(ローウィルフレーム)など、同じ製品ラインナップなのはそういう理由のためです。また、SCHIWINNでは普及モデルとして台湾製造の安価なSシリーズというのもあります。
自転車はMTBしか持ってませんので、普段、舗装路用のタイヤを入れて街中を走ることもありますが、細いスリックタイヤのMTBってのもカッコ悪いですし、山を走ってこそMTBというポリシーがありますんで、メインの用途は山ツーリング。
「古いMTBなので街乗り専用で余生を...」
というヌルい扱いは一切なし(笑)
雪なんか積もると出撃っす!
フレームもフォークも、特に性能が凄いとか軽いとかそういうことは全くなく(AMPフォークとか、現在のレベルで見ると「何これ?」レベルだし)、単に「造形に惚れた」という非常にヲタク臭い理由で乗ってます。
で、今回の記事は、秋になりましたし、そろそろMTBシーズンインということで、その前に長らくメンテを放っておいたフロントフォーク・AMP Research F4 BLTのオーバーホールをしようというネタです。
AMP Research F4 BLTとは?
ホルスト・レイトナーが立ち上げたAMP Research社のMTBフォークです。AMP Research社はAmerican Motorcycle Products、頭文字をとってAMP。名前の通り、当初はオフロードオートバイ向けのカスタムパーツを製造販売する会社でありましたが、90年代の初頭にアルミ削り出しのリンクユニットが特徴のMTBフォークと「ホルストリンク」の創始となったMTBフレームであるB2フレームを開発&販売にMTBへの参入が始まります。当時は劇的に軽量で細身の高級フルサスMTBを製造するメーカーとして活発でありました。残念ながらAMPは2000年に入った割と早い時期にMTBから撤退し、今はRV車用の電動ステップなどを作る会社になってしまってます。アメリカ製品にしては異例なほど繊細な作り込みで今も根強いファンがいてフォーラムなどでの情報交換は割と活発です>AMPフリークと呼ばれてます。
AMPのフォークですが、F1はスチールレッグ、F2からアルミレッグになります。F3でボディ形状が若干変更になり、F3 XCまで続きます。F3まではボディ内にスプリングを仕込んでダンパーユニット別体です。その後に今回のターゲットのF4 BLTが登場となります。また、ハイエンド品として「カーボンレッグ仕様」なる高級品も存在しますが、オクやeBayで見かけても高騰するので買えません。上の画像は左から「F1のスチールレッグのみ」「F1のスチールレッグをF3のブラックタイプのアルミレッグに変更したもの」「F3 XC」であります。真ん中のF1フォークはもう1台のMTBで現用中であります。で、90年代の終わり頃(たぶん、97年頃)に今回の題材となるF4BLTが登場となります。AMPは2000年頃にMTBから撤退後、なんと2012年頃まで個別にMTBパーツの供給をしてくれてました。上記の真ん中のレッグは、なんと2010年にAMPに注文して受注で作ってくれた部品だったります(数年前にAMP社自体が買収されて、今はMTBパーツのサポートは完全終了しています)。
前置きがちょっと長くなったです、AMPやSCHWINNのネタ話は別の機会にでも。
下の画像が今回のネタとなるF4 BLTフォーク、通称AMP F4。
削り出しフェチにはたまらない造形だと思います。
オイラ?
もちろん削り出しフェチですよ
今回はこいつのダンパーユニットのオーバーホールです。
ワタクシ、AMPフォークのダンパーの消耗部品を多数ストックしておりまして、実は以前、ヤフオクでAMPのダンパーユニットの修理承ります、と出品して10本以上のAMPフォークのダンパーをオーバーホールしたりしておりました(照)。
今はやってないです、色々と忙しくて自分のことだけで精一杯...
分解
まず、フォーク本体からダンパー&スプリングユニットのみ外します。コテコテに汚れてます。構造は至ってシンプルで、ダンパーユニットの構造を学習するには丁度よい教材ではなかろうかと思うほど。画像では1つですが、F4は2本ありますので、これから行う作業はすべてもう1本分もある、ということになります。
まずはスプリングコンプレッサーでスプリングを縮めて上部のリテーナーを外します。このスプリングコンプレッサーは専用に当方がフライス盤で製作いたしました。
スプリングを縮めていくと、この画像のように上部のリテーナー(お皿みたいな部品)がスルと抜け、スプリングのみを取り外せる状態になります。
これがリテーナーとスプリングを外した状態。下側のリテーナーはクリップの位置を移動することでスプリングのプリロードを調整できるようになってます。後期型のF4 BLTではクリップ式ではなく、普通のサスのようにネジ式になってます。
ダンパーのみの状態になりました。次に両端にあるアイレットを外します。
両端のアイレットはネジ込み式になってますので、画像のようなクランプツール(別名ジグ)に挟んでバイスに固定した上でロッドを突っ込んで回します。このクランプツールはAMP謹製の純正工具だったりしますが、精度の高い穴を開けられるフライスやボール盤があれば自作も可能です。
ボディ側のアイレットを外してオイルを排出、ピストンロッドが丸っと抜けます。Oリングのシールのみというシンプルな構造でダストシールの類いはありません。ユニット自体も小さくオイル容量も少ないのでオイルはもの凄〜く汚れやすく劣化しやすいです。500〜600kmの走行で殆ど泥水みたいなオイルです。
洗浄!
Oリング類を全て外します。今回、汚れが酷い状態でしたので、シンナーにどぶ漬けしてスラッジなどを除去します。
これが洗っただけの状態。これでようやく素手で触っても汚れない状態になったっす。部品点数はたったこれだけです。
ダンピングを発生させるオリフィスの穴ですが、時々、スラッジや泥で詰まってることがありますんで、念のためインセクトピンを通して貫通を確認します。使用しているインセクトピンは「有頭シガ昆虫針」というステンレス製の極細のものです(プラモ製作のリベット打ちに使うのでストックしてるっす)。
磨き!
磨き作業に入ります。ロッドに擦過でついた荒れが少しありますので、磨きます。
ロッド表面に傷がつかないよう、旋盤に優しめにチャッキングし、低速で回しながらコンパウンドで磨きます。間違ってもサンドペーパーなどはNGっす。そんなもんで磨いたらロッドの太さが変わってしまうっす。
前後のダンパーボディのフタ部品も外側も内側もピカピカに磨きます。なぜピカピカにするかというと、傷やゴミや腐食があると、Oリングとの隙間ができて、そこからオイルが滲んでしまうから。
ダンパーボディのフタです。内側と外側にOリングを嵌める溝があります。溝の部分は綿棒などで特にキレイに磨き上げます。なぜピカピカにするかというと、傷やゴミや腐食があると、Oリングとの隙間ができて、そこからオイルが...って前項で書いたっすね(汗)。左が磨く前、右が磨いた後です。磨く前、スラッジらしきものがこびりついているのが分かると思います。
もちろん、ダンパーボディの内も外も、アイレットなどの他の部品もピッカピカに磨き上げます。なぜピカピカにするかとい....もういいっつーの(笑)
組み立て
ボディ内にサスペンションオイルを並々と入れるだけのF1〜F3のダンパーと違って、F4 BLTの場合はサスペンションオイルの充填量に規定がありますので、組み立てはAMP発行のマニュアルと専用ツールに従って行います(このマニュアルはAMPのWebサイトのヒストリーコーナーでダウンロード可能なものです、今も可能かは分かりません)。
充填するサスペンションオイルはBelRayの#7です。オイルの固さはこれまでの乗ったフィーリングでの経験則です。あまり固いオイルを入れると小さなOリングだけの
ダンパーユニットですので、液圧に負けて漏れやすいです。
これがAMP Research純正のリフレッシュキット(F4 BLT用)。内容はOリングとナイロンワッシャーとダンパー留めネジなどです。ダンパー留めネジ以外は汎用サイズで中身はなんてことないものです、確か数百円の単位でしたので大量に買い込んでたっす。
とはいえ、純正を使うのもあれなので(ウチでのストック期間が長過ぎてゴムが古いかもしれないので)、ダンパーに使われているOリングは全て汎用サイズですので、新しいOリングは当方が持つ汎用品から同じサイズのものを使います。素材はNBRで対躍動部用です、左のインチ規格のテトラシール(角断面Oリング)の入手は海外通販頼みで面倒でした。丸断面のOリングはインチ規格品もMonotaroさんなんかで普通に入手可能です。
新しいOリングを装着した後、少しだけオイルを入れたボディにピストンロッドを挿入します。規定量まで入れた状態です。オイルレベルは、下端のボディキャップを13mm押し込んだ状態で上端をシールホルダーセッティングツールを差し込んで溢れさせます(とマニュアルに記載されてます)。上記のような量になります。
AMP謹製、純正のSeal Holder Setting Toolなるものです。長さと太ささえ分かれば旋盤で自作可能なツールですね。AMPの良いところはこういうスペシャルツールが安かったこと。これを差し込んでボディのキャップを押し込むと同時にオイルレベルを決定します
オイルも充填してボディキャップもねじ込んでダンパーユニットが完成です!
キレイです!
両端のブッシュ交換
ダンパー両端に圧入されているブッシュを交換します(大統領ではない)。
この部品は常にダンパーを固定するシャフトと擦れている部品で、内壁のテフロンが消耗してますので定期交換部品です。これも汎用サイズですが、片側が8x8x10のmmサイズなのですが、もう片方がインチ規格の3/8"x15/32"x3/8"などという特殊なサイズのため、これも海外通販で取り寄せました。画像では小さなブッシュの方です。大きなブッシュのサイズは1/2"x19/32"x1/2"で1/2インチマウントのMTBリアサス(FOXやROCKSHOXなど、多くのMTBリアサスメーカーが採用する規格)のブッシュに使用するものです、こっちはついでに買ったもの。
旋盤で製作した自作のブッシュリムーバーです。これで古いブッシュを押し出し、新しいブッシュをバイスで圧入すればOK。簡単な作業です。
スプリングをキレイに!
スプリングに薄らと錆が出始めていますので、酷くならないうちに対処します。
って、錆を落として、エアブラシで薄らと塗装するだけなんですけどね。何もしないよりはマシです。厚塗りすると塗装がペリペリ剥がれますので、薄ら塗料を乗せる感じで吹くのがコツです。
最終組み立て
分解作業で最初に使ったスプリングコンプレッサでスプリングを縮めてリテーナーを挿入すれば完成です。
片方が作業完了品、片方のダンパーにバネを装着すれば作業は完了。
完成です!
バフがけしたアルミボディにスプリングも黒々としてて引き締まって見えます。
横に置いている長いネジ類は、前出のブッシュを押し出すための自作工具です。その横の4つのリングが古いブッシュです。
冒頭で出たSシリーズも持ってます(右側)
SシリーズにはF1フォークを装着してます。
一見、フレームの見分けがつきませんが、細部はかなり造りが違います。素材も異なります(HomegrownはA6061-T6、廉価版のSシリーズはA7005)。この辺のネタは別の機会にでも。